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2011年 12月 20日
ワイズ出版からマンガ単行本『気分』(安部愼一・原作/西野空男・漫画)、『西遊』(まどの一哉)、『幼年クラブ』(西野空男)の3冊が、同時刊行されました。
感想・・・ってほどでもないけど。まずは『幻燈』でご一緒してる西野空男さんの作品集の感想を・・・。 ■西野空男作品集『幼年クラブ』 作品として、いちばん面白いと思うのは、やはり「長男」である。このシュールさは実に面白い。セリフも含め(どこからそういうセリフが出てくるのか?)その発想の自由さは、羨ましい限りである。 コマ割りや構図など、作画面では「蒸発日記」が、いちばんよくできてると思う。まずは、タイトルページ(の絵もいい)をめくった次のページに1ページ大の絵。この絵がいい。その次のページにかけての構図も面白く、上手い人だなあ・・・と(『幻燈』ではじめてこれを読んだとき)思った。 で、個人的な趣味としては、表題作の「幼年クラブ」がいちばん好きだ。その中でも、「じいちゃん」が、自分の皿のショートケーキのイチゴを、孫の「たっくん」の口へ運ぼうとしてるシーンがいい。(たっくんの皿の上にも、同じイチゴショートケーキがある)。セリフのないささやかな一コマだが、「じいちゃん」の「たっくん」への愛情がさりげなく伺える。 そんな温かな関係性(ひととき)がここにはあるのだが、その向こうには、複雑な事情や深刻な現実が「たっくん」を取り巻いているようである。ほのぼのとした買い物と食事シーンがあるだけに、いっそう物悲しさが染み入る作品である。 ■まどの一哉『西遊』 これは『架空』に連載されていた長編作品である。全11話で、最後の2話は描き下ろしである。連載時、この奇想天外の物語を読みながら、どのように完結させるのか? ということが、関心事であったが、なるほど、このように着地させたか。 うすうす感じてはいたが、この長編は、冒険活劇の形を借りた純愛ドラマであるということが、最後まで読み通すことによって明確になった。妻と手を握り合って歩いてゆくエピローグの情景は美しく、余韻が残る。 ここまで愛し抜かれたら女冥利に尽きるのではないかと思うような「悟空」の「大冒険」であった。こういうスタイルで純愛ドラマを描き上げた、まどの一哉のチャレンジと力量に拍手を送りたい気分になった。 好きなシーンは、「やばいっ ウィッグが!」というシーン。こういうアホらしくて笑えるシーンも、またマンガならではの醍醐味のような気がする。マンガ家って奴はほんとうに・・・、って感じで、このシーンは幾度見ても笑える。
by jun-milky
| 2011-12-20 21:27
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